大イチョウへ

/北には
神社 の森。神社の銅板ふきの屋根に3~~~4mにせまり
南西には
江戸のころより息づく古い倉庫(文化財)

今は電信柱と並び我が家に3メートル接近

そのあいだに立ち続けた
胴回り3、5メートルあまり、
空へ3十メートルものびる
大イチョウの木。

市道をゆく人を見守り、
宮参りの晴れ着を見送り、
公園のうらの道を通る
子どもたちの声を聞いてきた。

毎年、手を入れ、守ってきた。
小さな傷を受けながらも
季節がくるたび
青葉をゆらし、
黄金の葉を降らせてくれた。

けれど
これから来る大台風、大雨
そして南海トラフ地震を思うと、
ついに伐採という決断に至った。

父も母もその前も;;;
この木を大切に守り続けた。

私も小学生のころ、
その木の根元で居眠りするのが好きだった。
やあたろうという蛇と
並んで昼寝をした笑い話の日もあった。

弟は木のまわりに陣地を作って遊び、
もう一人の弟は
コントラバスの練習をしていた。

知らない人が来ては
木陰で詩吟をうなっていたこともある。

本当に
思い出の多い木だった。

いまは食べなくなった銀杏も、
昔はフライパンで炒って
熱々をほおばった。

母は茶碗蒸しによく入れてくれた。
女房もまた同じように。

伐採の日、
塩、酒、ご飯、
バナナ、みかんを盆に大盛り、
静かに座って
手を合わせた。

「長いあいだ、ありがとうございました」

そう伝えると、
寂しさで胸がいっぱいになった。

けれど
木が空へ返ったあと、
四方から光が差し込み、
庭は明るくなった。

そして私は
みかんの木を三本植えた。

七年か八年もすれば、
子どもや孫たちが帰ってきて、

「あそこに大きなイチョウがあったんだ」

そんな話で
また笑い声が広がるのだろう。

その時、きっと――
大イチョウも
風の中で一緒に笑っている。  令和8年5月の歌


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